『特定飛行とはなんですか – 規制の対象となる空域』では特定飛行のうち航空法の規制の対象となる「空域」についてお伝えしました。
今回の記事ではもうひとつの規制の対象「飛行の方法」について解説していきます。
規制の対象となる6つの飛行の方法
空港周辺や人口集中地区などの規制の対象となる空域以外なら、どのような方法でドローンを飛ばしてもいいというわけではありません。
状況によっては、操縦者に高い技能が求められたり、機体に特別な機能や装置が必要になったりします。このような知識をもたずにドローンを飛ばせば、人やものに被害を与えかねません。こうした危険を防ぐために、空域にかかわらず以下の6つの「飛行の方法」に規制が設けられています。
次の3つの方法でドローンを飛ばす際には、操縦ライセンスを取得して機体認証を受けた機体を使うか、航空局の許可を受ける必要があります。
- 夜間での飛行
- 目視外での飛行
- 人または物件との距離が30メートル以上保てない状態での飛行
また、次の3つについては、操縦ライセンスの有無にかかわらず、航空局の許可を受けなければなりません。
- イベント上空での飛行
- 危険物の輸送を行う飛行
- 物件の投下を行う飛行
なお、航空法では規制されている空域について飛行を認めることを「許可」と、飛行の方法については「承認」とそれぞれ呼びますが、一般にはどちらも「許可」と表しています。このブログでもすべて「許可」に統一します。
先に挙げた6つの「飛行の方法」を詳しく見ていきましょう。
夜間での飛行
ドローンを安全に飛行させるには、ドローンの位置や周囲の状況をつねに目視で監視する必要があります。ところが、明るい日中に比べて、夜間の暗闇では機体を見失いやすく、衝突や墜落などの事故も起こりやすくなります。このような危険を防ぐために夜間にドローンを飛行させることが規制されているのです。
「夜間」とは、国立天文台が発表する「日の入りから日の出まで」を指します。このあいだは、何時から何時までと決められているのではなく、飛行させる場所や時期によって変化します。たとえば、夜間の時間は1年のうちで冬至の日が最長で、夏至の日が最短になります。また同じ日でも東京と大阪では日の入りの時刻が15分ほど違ってきます。
気づかないうちに夜間になってこの規制に違反することがないよう、ドローンを飛ばす際はかならず日の入りの時刻を確認しておきましょう。飛行の時間が少しでも夜間に入りそうなら、あらかじめ許可を受けておくことも考慮してください。時刻は国立天文台のウェブサイトで確認できます。
目視外での飛行
「夜間での飛行」でも述べたように、ドローンの飛行では機体と周囲の状況をつねに監視するのが原則です。監視は目視で行う必要があり、それ以外の方法は「目視外」として規制されています。
ここでの目視とは「操縦者」が「肉眼」でドローンを見ている状態を指します。
補助者がドローンを見て状況を把握していても、操縦者が自分の目でドローンを見ていなければ目視外になります。このような飛行の方法は難度が高く、危険も高まります。
また、双眼鏡を使ったり、ドローンのカメラから送られてくる映像を手元のモニターで確認したりしながら操縦する場合は、肉眼で見ていることにならず目視外になります。視野が限定されてまわりの状況の把握が難しくなり、目視と同じレベルの監視ができないためです。操縦者がメガネやコンタクトレンズをつけてドローンを見ている場合は問題ありません。
操縦者とドローンの距離が何メートル離れていると目視外になると決まっているわけではありません。また、操縦者の視力や天候、ドローンの色と背景との関係などさまざまな条件によってドローンの見え方は変わってきます。目視外、すなわち「自分の肉眼で捉えられなくなる」可能性がある場合は許可の取得を考えておきましょう。
人または物件との距離が30メートル以上保てない状態での飛行
ドローンは、接触や衝突などの事故を防ぐために「人または物件との距離を30メートル以上保って」飛ばすことになっています。その距離を保てない状態での飛行は規制されています。
「人」とはドローンの飛行に直接にも間接にも関わっていない人、つまり第三者のことです。操縦者や飛行に関わっているスタッフなどはここでいう人には含まれません。
また「物件」は第三者の管理する物件です。たとえばドローンを使っての調査や撮影の対象となっている建物や構造物のように、管理者の依頼または了承を受けていれば物件には含まれません。
樹木や雑草など自然物と土地は物件には含まれません。舗装された道路や鉄道の線路なども土地の一部と考えます。しかしそれ以外の人工的につくられたものは、建物であれ、車であれほとんどのものが物件にあたります。
特に電柱や電線、信号機、街灯などには注意が必要です。都市だけでなく地方でも人が生活する場所のあらゆるところにあり、30メートル以上の距離を保つのが難しく、操縦ライセンスや許可を受けなければならないケースが多くなるのです。
イベント上空での飛行
お祭りや縁日など、多くの人が集まるイベントの上空でのドローンの飛行は、原則として禁止されています。ドローンの操縦ミスや故障などで落下させてしまった場合に人に対する被害が大きくなるためです。
ただ人がたくさん集まっていればイベントになるわけではありません。飛行が禁止される「イベント」にあたるかどうかは
- 特定の場所で開催されるのか
- 特定の日時に開催されるのか
- 集まる人数、規模はどの程度なのか
が主な基準となりますが、主催者の意図を含めさまざまな観点から個別の状況に応じて判断されることになります。
イベントにあたる例としては、先にあげたお祭りや縁日のほか、屋外でのコンサート、スポーツ大会、展示会などがあげられます。信号待ちでたまたまできた人の集まりや、ラッシュ時の人混みなどはイベントにはあたりません。
また、集まる人は不特定多数、つまり飛行に関わっていない人を指します。たとえば不特定の第三者が観客として自由に出入りできるような運動会はイベントにあたります。しかし同じ運動会であっても、入り口を施錠して観客を入れずに教師と生徒のみで開催する場合のように、すべての人が特定できていればイベントにはあたらないと考えられます。
イベント上空を飛行させる場合にはライセンスの有無に関係なく、日時と飛行の経路を特定した許可申請が必要になります。
危険物の輸送
火薬類や高圧ガス、可燃性の物質、有毒な物質などの危険物をドローンで輸送することは原則として禁止されています。輸送中に危険物を飛散させてしまったり、ドローンの墜落により爆発が起こったりするなど、人や物への被害が発生するおそれがあるためです。
ただし、ドローンを飛行させるために必要なバッテリーや燃料は、輸送していることにはならず、危険物には含まれません。
危険物を輸送するためには許可を取得する必要があります。たとえばドローンを使って農薬散布を行うことが増えていますが、危険物である農薬を輸送する必要があり、許可が必要なケースになります。
物件の投下
ドローンを飛行中に物件を投下することは原則として禁止されています。投下した物件によって人や物に被害を与えたり、投下によりバランスを崩したドローンを制御ができずに墜落させてしまったりするおそれがあるためです。
投下が禁止される「物件」には水や農薬などの液体も含まれます。
また「投下」とは上空から落とすことをいい、ドローンで輸送した物件を「置く」ことは含まれません。
ドローンから物件を投下する際は許可を取得する必要があります。先にあげた農薬散布は「物件の投下」にも該当し、許可が必要なケースです。つまりドローンで農薬散布を行うには「危険物の輸送」と「物件の投下」両方についての許可を取得する必要があるということです。
まとめ
特定飛行となる6つの飛行の方法は、空港周辺や人口集中地区などの空域に関わらず規制の対象となっています。飛行前の計画でこれらの飛行の方法に該当するかどうかをかならず検討し、必要な場合はライセンスや許可を取得してドローンを飛ばすようにしましょう。
この記事では特定飛行となる「飛行の方法」についてお伝えしてきました。「空域」については『特定飛行とはなんですか – 規制の対象となる空域』をご覧ください。