特定飛行とはなんですか – 規制の対象となる空域

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国土交通省航空局のウェブサイトや無人航空機の飛行の安全に関する教則を読んでいると「特定飛行」という用語が出てきます。

私も、2022年より前には見たことも聞いたこともありませんでした。

特定飛行という新しい飛行の方法が航空法に定められたということなのでしょうか。

特定飛行とは

特定飛行とは

  • 航空法の規制の対象となる空域での飛行
  • 航空法の規制の対象となる方法での飛行

を指します。

特定飛行という用語が使われる以前は、許可や承認が必要な空域または飛行の方法として定められていたものです。

2022年の12月5日に操縦ライセンス制度が始まり、一部の空域と飛行の方法については許可や承認がなくても、操縦ライセンスと機体認証さえあればドローンを飛ばしてもいいことになりました。

「許可や承認が必要な飛行」と「操縦ライセンスが必要な飛行」を合わせて特定飛行と呼びます。

規制の対象となる空域は4つ、飛行の方法が6つそれぞれ定められています。

この記事では規制の対象となる「空域」についてお伝えします。

「飛行の方法」については『特定飛行とはなんですか – 規制の対象となる飛行の方法』をご覧ください。

規制の対象となる4つの空域

航空法では、2つのことを守る目的で空域に規制を設けています。

ひとつめは人が乗っている飛行機やヘリコプターなど「航空機」の航行の安全です。この観点から、次の3つの空域でドローンの飛行が規制されます。

  • 空港周辺などの空域
  • 地上または水面から150メートル以上の高さの空域
  • 緊急用務空域

ふたつめは人やものの安全です。これによって、次の空域が規制の対象になります。

  • 人口集中地区(DID地区)の上空

ただ、上の文言を見るだけでは、たとえば、空港周辺がどこまでなのか、緊急用務空域が何を指すのか、どのくらいの住宅が密集すると人口集中地区になるのか、よくわからない人も少なくないと思います。

規制の対象と知らずにドローンを飛ばすことがないように、それぞれがどのような空域を示すかをしっかりと把握しておきましょう。

空港などの周辺の上空

空港やヘリポートでは、昼夜を問わず人が乗っている飛行機やヘリコプターなど、航空機の離着陸が繰り返されています。その周辺の上空でむやみにドローンを飛ばせば、航空機の運航に支障をきたしたり、場合によっては衝突につながったりする恐れがあります。このような危険を防ぐために「空港などの周辺の上空」ではドローンの飛行が規制されているのです。

規制の対象になる空域は、国土地理院の地図で調べることができます。

出所:国土地理院地図

地図の緑色で塗られている場所でドローンを飛行させる場合には、その空域を管轄する空港事務所に申請して許可を受ける必要があります。すでに操縦ライセンスを取得している場合でも個別に許可を取得してください。

また、空港やヘリポートごとに許可が必要な高度が設定されています。緑色の範囲内であっても高度によっては許可が不要になる場合があります。

規模の大きな空港では「高さ制限回答システム」でこの高度を確認できます。小さな空港やヘリポートでは、それぞれの事務所に直接問い合わせて確認してください。

地表または水面から150メートル以上の高さの空域

「地上または水面から150メートル以上の高さ」には飛行機やヘリコプターが飛んでいる可能性があります。先の「空港などの周辺の上空」と同様に、これも航空機の航行の安全を確保するための規制です。

「地表または水面から」とあるように「150メートル以上の高さ」は「標高」とは異なります。たとえば、1000メートルの山の頂上でも、自分が立っている場所、すなわち「地表」から150メートル以上が規制の対象になると考えてください。

この空域でドローンを飛ばす際は、先の「空港などの周辺の上空」と同じく、操縦ライセンスの有無にかかわらず、その空域を管轄する空港事務所に申請して許可を受ける必要があります。

なお、地表から150メートル以上の空域でも、高層のビルや鉄塔、送電線などの構造物から30メートル以内の範囲での飛行には許可はいりません。

出所:国土交通省航空局ウェブサイト

緊急用務空域

自然災害や事故などの際に行われる捜索や救助、消防などの緊急の活動を「緊急用務」といいます。飛行機やヘリコプターなどの航空機が緊急用務を行っている空域を、それとは関係のないドローンが飛行していると、これらの活動に支障をきたしかねません。

実際に2021年の2月に、栃木県足利市の森林で起こった火災では、消火のために活動しているヘリコプターが付近を飛行するドローンとの衝突を避けるために、一時活動を中断する事態となりました。

これを受けて、2021年の6月に国土交通大臣が「緊急用務空域」を指定できる制度が始まりました。

緊急用務空域が指定されると、原則としてその空域ではドローンなど無人航空機の飛行は禁止されます。

緊急用務空域は「空港の周辺」や「150メートル以上の高さ」のようにつねに設定されているのではなく、自然災害や事故が起こるたびに急きょ指定されます。ドローンを飛行させる前に、その場所が緊急用務空域に指定されていないかをかならず確かめてください。この確認は義務とされています。

またドローンの飛行中にそこが緊急用務空域に指定された場合にもすぐに飛行を中止する必要があります。

緊急用務空域が指定されたことは、以下の2つの方法で確認できます。

ドローンの飛行前にはウェブサイトで確認し、飛行中には通知を受け取れるようにツイッターのアカウントをフォローしておくのがおすすめです。

人口集中地区(DID地区)の上空

多くの人が生活する街なかには、住宅やビルなどの建物やさまざまな構造物に加えて、鉄道やバスなどの交通機関があります。そのような場所で操縦を誤ったり、バッテリー切れやGPSのロスで墜落させたりすれば、人や物に被害を与えてしまうかもしれません。こうした危険を防ぐために「人口集中地区の上空」ではドローンの飛行が規制されているのです。

「人口集中地区」は「DID地区」とも呼ばれ、国勢調査の結果から一定の基準により国が設定します。国土地理院の地図では、下図のように人口集中地区は赤色で表示されます。

出所:国土地理院地図

人口集中地区の上空でドローンを飛行させる場合には、操縦ライセンスを取得して、機体認証を受けたドローンを使うか、航空局の許可を受ける必要があります。そこが自分の所有する土地でも、まわりにまったく人がいない場所でも人口集中地区に設定されている場合は規制の対象になります。

まとめ

特定飛行となる4つの空域の規制は、ドローンを安全に飛ばすために定められたルールです。規制の対象と知らずに飛ばすことがないように、事前にはかならず空域の調査を行い、必要なライセンスや許可を取得してドローンを飛ばすようにしましょう。

この記事では特定飛行となる「空域」についてお伝えしてきました。「飛行の方法」については『特定飛行とはなんですか – 規制の対象となる飛行の方法』をご覧ください。

この事の執筆者


大西 務(おおにし つとむ)

京都府在住。1974年生まれ。2007年行政書士試験に合格。製薬会社の薬事部門で申請や届出などの業務を10年行い、2019年末に退職。2020年7月に「行政書士大西事務所」を開業→2024年9月廃業。50歳を前にして離婚も経験。温泉好きのいぬバカが書いています。

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